旅のストーリー

あと何メートルか海面が高かったら、このすばらしい島が姿をあらわすことはなかった。
でも、その島は目の前にこうして存在している。
一望のもとに見渡すことができるサイズの小さな島の周囲が白砂に縁取られ、それを取り巻くクリアブルーの海の下には、
珊瑚礁による自然の地底造形がはっきりと浮かび上がる。
この場所が生まれた奇跡を、そして自分がその地に足を踏み入れることの感慨は、島にどんどん近づいていく空の上で、また海の上で、ますます大きくなっていくのだ。
離島ならではの地理的な隔絶が、慌しい日常の連続性を、気持ちの面でもすっかり断ち切ってくれる。
行く手をさえぎるもののない島の上を通り抜ける爽やかな風の音と、それによってゆっくりと揺らめく南国の木のざわめきと、海のさざなみの音だけが、この島を包んでいる。
そこで何をするかを考える必要もない。
ただひたすら、小さな離島の静寂を感じてほしい。